2022/06/02勤務地16
大正の現場に配属された技術職員は13人もいましたが、今でも現役で活躍している方
もいます。その筆頭は当時副所長だった宮本さんでしょうか。御年かなり行っているはず
ですが、会社ナンバー2の取締役副会長の職にあります。
体躯は大きな方ではなく、どちらかというと細身な方でしたが、気合と共にあるような方
です。ある時型枠工事の親父と仕事のことで話をされていましたが、何か譲れない所があった
ようです。すると宮本さんは語気を強めて「それならもう現場は引き上げてもらってもいい」
と啖呵を切って見せたのでした。
甲高い声で言い放つと、親父もそれ以上は何も言うことが出来なかったですね。
都島工業高校出身の高卒でしたが、当時から彼の評判は会社内に轟いていましたね。
順風満帆なことだけではないリアルな現場は、色々なことが待ち受けてもいます。
そんな時彼の押しの強さや言葉使い、気合は相手に伝わり、たちまち軌道修正される
のでした。
今でもそういう傾向はありますが、一癖も二癖もあって気難しい人種や、体を張って働いて
いる職種、人達は扱いが難しい所があります。こちらがそれ相応の眼力を持ち、気合の伴う
所作が無いと軽くあしらわれるのでした。そういった面では現場マンの何たるかを、
宮本さんから学ぶことが出来たのでした。
さすがに今では言葉使いは丁寧でやさしい時代になってきました。しかし本質はそう
変わっているようには思えません。表面的にはソフトで人には親切ですが、本音を見せ
ないで、当の本人は本音が分からずに物事が動いている可能性があります。
何かうまく行かないことが増えてきたら、自分の行動を見直してみることも大事ですね。
本音で直言してくれる人が少なくなった今は、むしろ厳しい時代なのかもしれませんね。
それから難度の高い工事現場、極めて工期の少ない流通系の建物等、会社の命運を握るような
工事現場は、宮本さんでなければ成し得ないと、社内では言われるようになったのです。
それが老舗ではありますが、同族企業の姿で300年もやってきた経営陣からの、信頼にも
繋がったのでした。
ある時私が慌ただしく動いていると「君野よく今の現場の様子を把握してやれよ」と一言
言われたのです。宮本さんには足元が浮いたような仕事の仕方をしているように、見えたの
かもしれませんね。自分を全て会社のために捧げて60年余り、まだ現役でやるのだはないか
と思っています。