2022/06/17汗をかく
現場マンの役目は、たった一言で言うと「進行中の工事現場をつつがなく終了させる
こと」と言えます。現場マンは総指揮官の立場ですので、職人のように体を張って働く
必要はまったくありませんね。またそのようなことを期待している訳でもありません。
ところが私達が若い頃の現場は、事務所に居座っていると、早く現場に出て仕事をしな
さいという雰囲気があったのです。
それで仕方なく?何かしらの作業をすることも多いのでした。先日紹介しました大正の
現場で一緒の尾崎さん、尼崎処理場の現場では主任の加納さんは、まさしくこのような
先輩でした。後輩社員は先輩がそのようにして忙しく立ち回っていると、事務所にいる
訳にもいかず同じようにして働くのでした。
当然ですが、そのような働き方を疑問に思う社員も多くいたいたのでした。
特に若い社員は「この仕事は俺達のする仕事ではないだろう」と思うのは当然
でした。私もこのような時代に入社しましたので、不満はあってもそのようなもの
だろうと流されていましたね。
新入社員として入社した現場では、田村さんが実務的にはトップでした。
私より8歳も年上ですので、もっと古い価値観で現場は動いていたと思うのです。
しかし一切現場で作業をしてきなさいとは言われない方でした。
「あのな、現場に出て作業することは良いとは思うけど、何か違わないか」と
いうのです。
君に明日の事、1週間先の事、1か月先のことが見えているか?と言うのです。
新入社員の私に見えているわけがありませんね。
確かに汗水かいて一生懸命に作業をすれば、もの凄く働いたような感覚になる。
その上充実感まで覚えるので、始末が悪いと。そうではなく机に向かい、今の現場
状況を把握して、次にすべきこと、先の段取りを考えることが大事なのではないかと。
それが本来の現場マンの仕事であると言います。
半人前にもならない人間に、現場マンの理想の姿を教えてくれた田村さんは、今振り
返っても偉い人だったと思います。
作業に逃げずに、汗をかくべきは頭だよということを言いたかったのです。
そのような方ですので、建築部長まで出世してついこの前引退したのでした。
「4代の社長に仕えてきたよ」と言って、やっとゆっくりとした人生を送るらしいです。