2022/07/22伝わらない暑さ
屋根葺きの素材として茅が葺かれていたのは、当時瓦屋根は高級品であり庶民の
家まで普及しなかったことがあります。
山里にいくらでもある茅を刈り取り、集落の共同体の中で人々が茅葺き作業をする
ことは、日常のことでした。多くは農家ですので、別な面からも家は有効に活用
されていたのでした。
土間を広く取り、雨天時の農作業が出来るようにしてあったのでした。
また茅葺き屋根は勾配を急に取る必要があり、その結果高い屋根裏空間が生まれる
のでした。そこに蚕を飼ったり、また米や稲わらを収納する空間にしてあった
のでした。
残念ながら私が生まれる以前のことで、記憶はなく話として父母から聞いていた
のでした。厚く葺かれた茅葺き屋根の特徴の一つが、断熱性能が非常に高いと
いう事です。夏の時期昼食を食べると、午後三時位までは作業を休む習慣があり
ました。日中照り付ける太陽の日差しは強烈ですが、横になって体を休めていても、
さほど暑さを感じないのです。
分厚い茅の断面が空気の層となって幾重にも重なり、強烈な暑さを防ぐ役目を果た
していたのです。そのように全く快適な屋根素材であったのですが、都市化が進むと
防火上の問題もあり、今では文化財になった建築くらいしか葺くことは出来なくなり
ました。
白川郷の世界遺産建築の民家を訪ねた方もいるかと思います。
夏の季節に訪れて敷居をまたぐと、スーッとした涼しい空気が漂っていることを実感
するのです。茅葺き屋根に注ぐ太陽熱は、少しも部屋に伝わってこないのです。
他には自然素材そのものですので、保湿性や防音性にも優れた効果があるのでした。
古い茅葺の家は珍しく貴重な建築ですが、外壁は板張りのことが多いです。
それが通気の良い家ともなっているのですが、外壁を土壁等にすればもっと快適性が
上がるはずです。それは簡単なことではないですが。