2022/08/18なかなか直らない
今年の芥川賞候補の作品は全て女性作家でした。
そして決定したのは「おいしいご飯が食べられますように」と言うものです。
なんとも分かりやすい題で、親しみやすさと日常の生活風景が想起されたのでした。
年に二回ある賞の作品は努めて買って読むようにしています。
評判を気に掛けながらも買うことになるのですが、そこは選者の皆さんから支持された
逸品のはずという思いがあります。
軽く感じられるお題ですが、よくありそうな会社の日常が描かれていて、読みやすい
作品でした。難しい本と違い、空いた時間や休憩のひと時にちょい読みしても全然
大丈夫でよかったです。
ディスプレイで文字を読むことの多い今の時代に、実際に本を手に取ってページをめくる、
この次ページへの期待感がなんとも良いです。なかなか染み付いた感覚があって、古い人間
には変えられそうもありませんね。
またこれは良い資料だと思うとすぐとっておきたくなる性分で、紙への信頼感と安心感は
圧倒的です。それは単にパソコンのホルダー分けとファイリングがうまく出来ない事
でもあるのですが。
さて書かれていることは、日常に起こりそうな会社の人間関係が、スイーツと食事を中心に
描かれていることです。スパイスのように二人の恋愛事情も入ってきて、情景がよく浮かぶ
のはよかったです。スイーツを中心に置きながら関わる人間の心を細やかに書く、これは
女性でないと出来ないと思われるのです。
人間のことがよく書けているなと、素人目にも感じますので、そこが選者の目にかなった
のでしょうね。そして作者の言いたいのはこれかなと感じることがありました。
「私達はよく周りの人に、頑張れと言って励ますのですが、自分を励ますのは難しい」と
いうところです。うまく行かないことの多いこの社会で、それだけではなさそうだと感じ
ます。もう一つは、「人間が助け合う能力がなくなってきている」と言うところです。
作者は都会ではない四国の生まれです。ここでの生活は良くも悪くもコミュニティがあって
育まれたはずですね。そこの体験があっての事だと思いましたね。