2022/09/01北のこと3
回りの環境は良いのに逆張り的にリビングを北に向ける必要はありませんね。
相当の理由があり、また立地上不利なことが予想されるときに、敢然と決断して
進めたらいいのではないでしょうか。
一つの例を上げますと、その土地は高台の住宅団地にあったのでした。
周りの家々は造成された土地に建っていて、南には5メートル幅の道路、東西には
民法上の規定50センチの空間を隔てて家が建っています。
一般的な家の間取りとしては、南に面してリビングや和室が配置されることが多い。
この土地は特段の事情があるわけでも、何かの配慮が必要なこともありません。
むしろ長所を持った土地でした。それは眺望の素晴らしさです。
家主は大きな開口を設けて、いつも眺望を眺めていたいという潜在的な希望があった
のです。
しかし北向きに大きな窓を設ける発想は、なかなか勇気が要ることです。
2階に、あるいは1階のどこかに窓を一つ設けてくれたらそれでいい。
この様な考え方だったようです。それが住宅建築で著名な伊礼智さんが設計者として
加わることになり、桜島と錦江湾の見える北方向に大きな窓を設けたリビングを配置
したのです。
出来上がった2階リビングから見える雄大な桜島と、群青色をした錦江湾の姿は見事な
ものです。流石当代一の建築家はやることが違うなとの思いを抱いたのでした。
そしてここでの学びとなったのは、飛びぬけた長所を持つ土地にはセオリーを時に捨てる
ことも必要だという事です。
無難にまとめるのも手ではありますが、それ以上に土地の持つ特徴を掴み活かすことで、
オンリーワンの家が出来たのです。全てにおいて百点を取ろうとしても出来ないことです。
出来るようになる事と失うかもしれない事とをよく知ったうえで、思い切った決断が
出来るといいですね。次回ももう少し続きます、よろしくお願いいたします。