2022/11/20続、やがて変わる
空港になぞらえて前回お話しましたが、他産業界にも似たようなことはあります。
人々の価値観は時代によって変化しますが、どのような変わり方かは分かりません。
回帰することもあれば全く新しい価値観がやってくるのかもしれませんね。
私がお世話になる建設業界(ゼネコン)はその昔旧態依然として、他産業界から
うんと遅れていたのです。
特殊な事情を抱える産業ではありますが、価値観や意識に於いては改善の余地が大きい
のでした。私たちが若い頃には改善され始めていたように思いますが、それでも残って
いる古い慣習や産業風土は根強くありました。
たとえばコンクリートを打つ前には、鉄筋という棒状の鋼材を縦横に組む作業があります。
これの作業を職員は現場でしなければいい社員になれないということが言われていました。
鉄筋屋さんの仕事をしなければならないとはどういうことか。それを理解するのは難しく、
まったく古臭い考え方です。
その根拠となるのは、職人のする作業を身をもって体験しなければ職人を使いこなすことが
出来ないというものです。これは分からないでもありませんが、いつまでも職員がやること
ではないと思いましたね。私たち若い社員は主任や副所長が率先してやる職場では、これに
従わなければなりませんので大変な思いをするのでした。
ユニフォームをドロドロにしながらやるわけで、大手のゼネコンでもこんなことをやらされる
のかというのが正直な実感でした。とりわけ加納副所長や尾崎さんはこのことがいたく好きな
方でした。
足袋を履き、鉄筋を組み、足場を直し一時も事務所にはいませんでした。
その反面進歩的な村松所長や田村所長さんは尊敬できる人で、事務所で明日のことや段取りを
考えることが大事で、事務所で頭を使って仕事をしなさいというのです。
断然こちらのほうが有難いし、我々若い連中は将来はこのような上司になりたいなと思うの
でした。
それから私達のちょっと前の世代ですが、建築士の試験は役に立たないから受験はしなくて
いいという風習がありました。
そんなことを言う現場所長は、自分がそのようにして育てられてきたので、当然無資格です
し自分の価値観を下の者にも押し付けるようになるのでした。
まったくひどい話ですが、当時のありのままの姿はどこもこのような姿でした。
私達が入社以降はこのようなことは改善されてはきましたが、やはり一足飛びにというより、
少しずつ少しずつの変化でしたね。
今では現場にシャワーを設置して、汚れた体を清潔にしてから電車で帰るようにしてある
ようです。これは職人さんのことであり、いい現場環境になってきました。