2020/11/23木材の乾燥5
鹿児島県工業技術センターは霧島市隼人にあります。
昔県工業試験場と言っていましたので、こちらのほうが馴染みのある名前になります。
名は体を表すといいますが試験場という名前の通り民間の製造業者や工場の依頼を受けて資材
や製品の検査、分析をしてくれます。有料ではありますが地元企業の技術支援や新しい製品
のエビデンスを出してくれますので、中小零細業者には大きな手助けになります。
建築業者が木材の柱や梁を持ち込んで検査することもできます。お付き合いのある木材製品
メーカーが梁の強度を知るために自然乾燥材と人工乾燥材をセンターに持ち込みました。
試験機は曲げ強度を測るもので横に渡した梁に上から荷重をゆっくりとかけていくものです。
徐々に梁への荷重を増していきますと、梁材はたわみ始めてきます。
5センチ、10センチとたわみは段々大きくなっていきます。途中で荷重をかけるのを止めて
どれ位復元するのかを見ることにしました。
かなりの荷重をかけてたわんでいた梁が、荷重を解くと元の姿にすっかり復元する
ことが分かりました。さてこの木材はどちらの梁だったのでしょうか?
今までの話の流れから自然乾燥材とわかりますね。一方の人工乾燥木材の梁はある程度たわみ
は戻るものの完全に元の姿ではありません。
再度試験機に乗せてさらに荷重を増していきます。どんどんかけ続けていきますとバキッと
音を立てて材が破断する瞬間がやってきます。
たわんだ梁の繊維は不揃いにちぎれ無残な姿に変わりました。自然乾燥材の梁は
大きくしなり湾曲しますが破断することなく持ちこたえています。
私達は木材のこと、乾燥のことをよく知った上で家を建てようとする少数派の人間です。
ある程度予想していたものの、現実の梁の破壊する姿を見た時、その違いを改めて認識して
おかなければと思うのです。
破壊試験をするとアナログの針の動きにつれて荷重耐力曲線が出てきます。
粘り強く耐えて木本来の柔軟性を発揮し強度が出る自然乾燥材。
荷重が増すともろく折れてしなやかさに欠ける人工乾燥材。
元々同じ木だったものが乾燥の仕方でこうも違う現実をよく知って
木の家を造りたいですね。