2021/02/12中と外が緩やかにつながる
知覧の武家屋敷や農家住宅には縁側や土間がよくみられます。
かくいう私の実家は誰も住んでいませんが、やはり土間があります。
土間は暮らすうえでとても実用的なものでした。餅つきや天気の悪い時の
農作業、あるいはかまどを置いて煮炊きをするなど、使い勝手がよくて大変便利です。
縁側の下には沓石が置いてあって、庭からの上り口になったり近所の人がやってきて
はお茶を飲みながらの井戸端会議が弾むのでした。縁側はその他にも生活用品を繕ったり
布団を干すなど日常生活には欠かせない場所でした。
土間も縁側もはっきりした室内ではなく、かといって外でもありませんね。
このような外でも中でもない所は境があいまいですが、人が暮らすにはちょうどいい
塩梅の空間になります。
現代の家造りでも、土間のある家は人気があり自宅に欲しいという人は少なくありません。
玄関土間から伸びる土間はリビング、和室とつながりますと空間として広がります。
そのうえ部屋への繋がりがいくつも出来て、回遊性という快適な暮らしが生まれます。
この前雑誌の対談で建築家の伊礼智さんが話されていました。
沖縄出身で住宅に強い建築家の一人ですが、「中と外が緩やかにつながる」家は豊かな
住まい方が出来ると。
それは昔の生活様式にはなくてはならない住まいの形でした。
実用的に必要性のある住まいだったのですが、それだけでなく暮らし方の豊かさも
あったのです。中でもない外でもない所は、変化のある空間でありそれだけで
躍動感を覚え、住まい方に楽しみを感じるものです。
人が自然と土間を欲しがるのは分かりますね。