2021/02/11専門用語
先輩に付き従い毎日過ごすようになると、現場が生き物のように
ダイナミックに動いていることが肌で分かるようになってきます。
躯体(クタイと読みコンクリートの構造体をいう)のコンクリートを
打設し終わると職人の数と職種はどんと増えてきます。
これからサッシュ屋、大工、電機屋と次々にやって来て下の階から
順番に内部工事が始まります。
現場を戦争に例える人もいますが、あながち間違っていないと思うのです。
先輩がキミノ君隣の部屋は水が出ているか確認してくれないか、
と声を掛けられます。「ミズ・・・」ですか。
タイル割をするから手伝ってくれ。「タイルワリ」とは何だ。
このような調子で分からない言葉が飛んできます。
またトランシットという光学機械が現場にはいつも備えてあります。
学校で測量の時間に特攻観音の坂を上ったり下りたりしながら、
実地訓練を重ねてきたぞ、と思っていたらこの矩は(カネ)は合っているか?と。
そのトランシットを今度は3分で「据えろ」と無茶を言ってきます。
据えろとは測量できるように水平、垂直に機器をセットするということです。
ある時はサッシュが納まらないので「斫って」(はつって)来いという
指示をもらいます。初めて聞く言葉が多く意味を咄嗟には理解できません。
「ミズ」は水平の墨のことで、建物が転ばないように(傾かないように)
作るための基準となるもの、「タイルワリ」とはタイル割りと書いて、
切断した小さなタイルを張ることは美観上見苦しいので、予めタイルを
切らないで済むように割り付けることです。
「カネ」とは直角のことで、これが狂うと後々の作業に大きな支障が
出ますので、水同様大事な基準の線です。
「斫り」(ハツリ)は斫取ってとか言いまして、コンクリートや石を砕き取る
ことを言います。木造のように鋸やノミで切り取ることが出来ませんので,
重いハンマーを振るいコンクリートノミで斫るのです。
新人はこれを現場で洗礼のようにして振るい、時にはハンマーを手に当てて、
痛い思いをしながら作業をすることで仕事を覚えていくのでした。