2021/03/17西岡常一
法隆寺は日本の誇る名建築ですが、ここのお抱え宮大工として代々
仕えたのが西岡家です。中でも西岡常一は最後の宮大工として名前が
知られています。いわく鬼の棟梁と称されるように、弟子には厳しく指導した
ことで知られています。教えることをせず見て、盗んで覚えろというものです。
教えたものはすぐ忘れてしまうので、自分で研究心や探求する気持ちを持ち続けて、
いつか師匠を超えろと教えています。
西岡さんは薬師寺の再建にも関わりましたが、全国から大工を募り、優秀な者を
選抜して数多くの薫陶を与えています。「木の癖を知り木を使え」と言う言葉は
つとに有名ですが、生命を持つ木はそれぞれ育つ過程で癖が出るものです。
例えば一本の木でも南側の日の当たる年輪は、少し北側の年輪より大きくなっています。
また斜面で育った木は湾曲した材になります。傾斜の低い方に木は
膨らむようにして曲がり、大きくなっていきます。土地の傾斜が大きい程この癖は
大きなものになります。
まっすぐした通りのいい木だけを選んで使えるならいいのですが、癖のある木は
必ず中に混ざってきます。そうすると癖のある木でも使わざるを得ないですね。
その湾曲した木の使い方は工夫が必要です。それは曲がっている方に荷重がかかるように
向ける事で、大きな荷重が掛かっても耐えられるようになるのです。
木の癖(特徴)を見抜き適材適所に使うことで、今までマイナスであったものが
プラスにもなりうるのです。「木組みは人組」これも人間を木になぞらえて表現
したものです。木に癖があるように人間にもそれぞれ癖があります。
人間の癖を知りふさわしい仕事に就かせることで、個性が発揮され、いい仕事が
出来るということです。西岡棟梁の功績は大きく、数多くの宮大工を輩出して
伝統建築における匠の技を継承することが出来たのです。