2022/01/14誤差の範囲
建築物の設計をするときは、建築士の有資格者でなければならないとされています。
木造であれ鉄筋コンクリート造であれ、規模の違いはあっても専門の職に就いている
人の設計が必要です。このことは建築士法第3条に明記されていて、取り立てて言う事
でもありませんね。
それからあまり知られていませんが、建築積算士なる資格があるのをご存じでしょうか。
私も若い頃試験を受けて無事合格しましたが、今はもう手放してしまいました。
この資格は建築物の数量を拾い(積算すること)公正な値段を算出するために必要で
欠かす事の出来ない資格と言えます。建築の学校に行くと必ずカリキュラムとして学ぶ
ことになります。設計された図面を広げて鉄筋の重量、型枠の面積、コンクリートの
体積を計算するのです。構造体だけではなく、内装や建具、防水、塗装、木工事とほぼ
全ての工事を積算することになります。
大きな工事だと2~3週間かけて数量を拾い、これに単価を掛けることで工事金額が算出
されるのです。積算士は比較的新しい資格でして、制度化されてまだ30数年位でしょう
か。公共工事は一般的に競争入札という形で執行されますが、発注者の出した数量が実情
に合っていないことがよくありました。
分かりやすく言うと、積算した数量が足りないのです。例えば鉄筋工事は重量に鋼材の
値段を掛け、それに組手間という労務費を足して計上されるのですが、何トンもの違いが
あると原価計算もあったものではありません。これは一概に役所だけが悪いのではなく、
積算する個人の問題でもありました。人にはばらつきがあり、また決められた積算のルール
が無い時代ですので必然の事でした。
ひどい場合は数パーセントの積算誤差も有り、現場を預かる身には全く誤算でした。
それが今では積算士が出来たお陰で微小な範囲の誤差に収まり、安心して現場を進められる
ようになったのです。