2022/01/31続関門
1次試験には合格したものの、私にとって2次試験こそが難関となって立ちふさがった
のでした。初めて学科合格した年の設計課題は「屋内運動施設」というものです。
設計課題はあらかじめ事前に発表されますので、皆さん対策を練って望むのでした。
本番までの期間は4か月位はあった思う。
この間いかに沢山の課題を解いておくかが一つの鍵となります。
というのもこちらは現場マンで通してきた人間です。設計事務所勤務の人とは訳が違います。
T定規と三角定規、三角スケールをいかに手に取り上手に使うかが勝負です。
そして与えられた設計課題をいかに早く理解し、建物を計画出来るかが問われるのでした。
いわゆるエスキースと言われる作業で、この構想や下絵がまとまらない限り、作図に取り
掛かることはできません。6時間30分という時間は限られています。
またエスキースと作図の配分がうまく行かないと、設計図として仕上げることが出来なく
なります。仕上がっていない図面に監督官は合格点は上げられないのです。
目安として1時間半でエスキースを上げれば何とかなると言われていました。
後の5時間はひたすら定規を動かし、右手では製図用シャーペンを走らせる作業に没頭
するのです。一切の休憩も無く時間との戦いに追われて書き上げるのです。
ただこの年のエスキースは、最後の詰めがどうしてもうまく嵌りません。
気が付くと1時間半を過ぎてしまいました。私の作図能力からすると、5時間を切って
仕上げたことは一度もなかったのでした。
当然焦りの気持ちが徐々に募ってきます。フルに頭を回転させて、アイデアを呼び込もうと
しますがあと少しの詰めが出来ない。この時の心境は、今でもはっきりと記憶に刻まれて、
若い頃の数多い苦境の一コマになっています。なぜうまく行かなかったのか今思い出すと、
試験には必ずミスを誘発するすような所が作ってあります。(落とし穴ともいいます)
例えば「敷地にある大きな木はそのままに生かして設計せよ」ということ等はよく経験する
のでした。与えられた条件は何があっても入れ込まないといけません。
ともあれ苦しい時間帯になって私は、禁断の手を使うことで乗り切ろうとしたのでした。