2022/04/15山の幸
日本の山林は建築用材として植林された山と、いわゆる雑木林と言われる山が
あることは知っての通りです。自然環境に良く災害にも強いのは、まったく相応しくない
名前を頂く雑木林そのものでした。
誤解が生じるといけませんので、ちゃんと言います。植林された山は、杉やヒノキのこと
を主に言っていますが、きちんとこの山が手入れされて、維持管理されるとそうそう災害
に合うこともなく、有用な資源を生み出してくれるのでした。
しかし近年植林された山は、採算に合わないということが起きていたのでした。
すると、草払い、間伐、枝うち等の作業をしたくても、出費がかさみ赤字になって
しまうのでした。
ここが今の植林された山の最大の問題になっているのでした。
その点雑木林は昔の農耕生活の営みから、山とは切っても切れない関係で、多くの恵みを
与えてくれる存在でした。この多様な山の恵みを体験的に知っているのは、昭和30年代
の前半迄に生まれた地方の出身者が最後になるでしょうか。
この世代に生まれた人達は、明治の生活様式も知っていますし、今の近代化された
消費文明の利便性のどちらも知っています。
この時代は急速に生活様式が変って行き、今日より明日は確実に便利な世の中になると
皆が信じていた時代です。
山の幸はやはり雑木を抜きにして語れるものはありませんね。
最大の恩恵はやはり薪を得ていたことではないでしょうか。まだ燃料を薪に頼っていた
時代は山に分け入り、薪として背負っていたことを覚えています。
木炭としての利用も雑木でないと出来ないことです。更には落ち葉を集めて肥料にする
ことも、広葉樹を中心とした山ならではのことでした。
他には子供が喜ぶカブトムシやクワガタ、美しい羽根を持つ玉虫を追っかけては、夢中に
なって遊ぶことが出来るのは、田舎の子供の特典でもありました。
そして季節ごとに豊富な山の果実を頬張るのも、楽しみとなことだったのです。
グミ、山ぶどう、アケビ、ウベ、野イチゴ等を目当てに里山に分け入るのですが、
その植生の様子を見るだけで実の成っている所は、子供でも分かるものでした。
今ではこのようなことを体験した人は少数派になってしまいました。
雑木の山は多くの恵みを人々に与えてくれていたのでした。