2020/12/21役所の誤算
この世では時として思いもよらないことが起きることがあります。
なんとも居心地の悪い、見てはならないものを見た、そんな気持ちだっただろう
と察するのです。
防災科学研究所という文部省管轄の機関で家の耐震実験を行いました。
場所は神戸にある実物大振動台実験場でのことです。震度7クラスの地震をどちらにも
加えることでその強さを比較して見るというものです。
一つは長期優良住宅(国が定めた長期にわたる構造、設備、性能等の高い基準の住宅)
もう一つは普通の住宅です。補助金を100万、200万円出して普及に努めるほど
長期優良住宅は、国が推奨する手本のような造り方です。
税制やローン金利の優遇もあり今でも人気のある建て方です。
実験は同時に振動を加え徐々に強くしてゆきます。揺れがだんだん激しくなり、
3階建ての住まいは揺れがはっきりと分るくらい横揺れを始めます。
やがて揺れがマックスまで達したとき、微塵に1階を潰して横転破壊してしまいました。
片方も大きく揺れましたが倒壊することなく立っています。
さてどちらの家が倒壊してしまったのでしょうか。
意外なことに長期優良住宅の方が倒壊してしまったのでした。
耐震等級2が長期優良住宅の家で1は普通の家、3は最も高い性能を有する家に
なります。その場にいた当事者や報道機関は、悪い夢をみているような顔をしています。
大いに驚き困惑してしまったのでした。衝撃が走った事件として当時大変騒がれたのでした。
この事件の問題は一体どこにあったのでしょうか。
基礎に土台や柱はがっちりと固定され、梁も沢山の緊結金具で固められています。
激しい揺れに家は柔軟性を失い箱ごと倒壊してしまったのでした。
机上の計算では成立するものの、現実の家はそのようにはなりませんでした。
このことは多くの教訓と示唆を建築業界や役所に与えています。
家の構造体を堅く固めすぎると柔軟性を失い、一気に倒壊を起こしかねないということ。
木の持つしなやかさを考慮して構造体を計画する必要があるということです。