2022/02/27ないものねだり
奈良に吉野というところがあります。
吉野杉で有名な所で、豊富な森林資源があるところから三大杉産地としても知られています。
奈良県の地図を見ると分かるのですが、北部は奈良盆地で開けていますが、南部は深い山地
に覆われて人が沢山住むような地域ではありません。
ここの山林事業を見学した後に吉野地方を散策したのでした。吉野桜でも知られるこの狭い
地域に、吉水神社というとても古い建物があります。古くは義経と静御前の居留したところ
でもあり、後醍醐天皇の南朝も一時置かれたところです。
秀吉もまたここで花見を行うなど、歴史に関心のある方が一度は訪れたい所でもあります。
とても古い建築で、天皇の玉座の絵画や秀吉ゆかりの品々、静御前の着用された衣装等、身近
にその姿を拝見できるのです。静御前と義経がいまはの舞を終えて、追っ手から旅立ったのも
この地です。近くの弁慶の力釘は、親指で石に押し込んだとかでパワースポットにもなって
いるとか。歴史に彩られた空間と厚い歴史の重みを感じられるこの地では、いにしえ人の
息遣いが聞こえるのでした。
また照度は落としてあるものの撮影も可で、これほどの貴重な宝物をカメラに収められる
のも珍しい気がします。
広く長い床の間の右には、違い棚を設けた本式の書院造りの設えがあります。
桃山文化の最古のものだとか。また天井は高いので、内法にある鴨居、長押がとても低く
感じられます。5尺8寸(175.5センチ)の高さは私の身長と同じ、真下に立つと
丁度頭がはまり、古建築を見学する際の決まった動作になっています。
大昔から変わらないこの高さのモジュールも、現在は200センチ位に高くなっていますね。
鹿児島県下に、そして郷里の勝目(川辺)にも大きな社寺仏閣があったのですが、
全て廃仏毀釈で取り壊されてしまいました。今は腕をもぎ取られた仁王像が残るだけです。
何とか後世に残せなかったのでしょうか。