2022/03/27勤務地続7
水口の現場は鉄筋コンクリートの3階建てで、特別な工法や技術を要するものは
ありませんでした。従来の伝統的な工法で工事を進めれば問題はないと思えたのです。
設計施工での受注でしたので、ゼネコンにとってはやり易い現場とも考えていたのです。
それは意思決定がスムースに行われ、会社の決めた仕様で進めることが出来るので
私達現場マンとしてはありがたい現場ということになります。
同じ会社の社員同士が設計と施工に携わるので、息の合わないはずがありませんね。
もっとも会社や私達社員の名誉のためにも言いますが、工事がなれ合いになるとか、
何かの目こぼしを期待できるとか言う、低次元のことは一切ありませんので念のために
申しました。
どちらかというと補い合う関係と言えるかと思います。
良い建築を造る過程において見落としがちな所、変更した方がよいのではないかという点が
あったとしたら、遠慮なく話すことが出来るからです。
たとえ少々費用が掛かったとしても、工法的により相応しいと判断すれば、それを採用する
のが、見識のある会社と言えますし、社会的にも評価されるのです。
話しはそれますが、鹿児島に帰ってからJVでの建築工事に携わったことがあります。
民間工事で競争が激しく予算的には厳しい現場でした。
ベンチャーを組む会社は大手5社の一角、〇林組です。建築の設計製図は、鹿児島でも
トップを走る東条設計の担当です。
躯体工事の鉄筋組の事で、〇林組の椎山所長さんから質疑が東条設計に上がったのです。
「壁の鉄筋に斜筋を増して組みたいのですが許可を頂けますか」というもの。
会社の仕様では壁のクラックを防止するために、鉄筋を増して組むようになっている
と言います。
構造計算がなされて不足の無い配筋であることは、建築屋であれば分かります。
しかし敢えて取り上げて指示を伺い、許可を得て工事をする姿勢には驚くのでした。
さすが大手5社、天下の〇林組さんと思いましたね。
さて会社の設計部で図面が引かれたということは、営業的に頑張ったということが
ありますし、クライアントさんとは有り難いことに一定の信頼関係を既に築かして
もらっていると言えます。
このような背景で順調に進むかに思われた工事でしたが、にわかに怪しい空気が漂い
始めたのでした。
それは人事の移動にまで発展して、この先の工事に暗雲が漂うことになるのでした。
それは副所長の有馬さんと桐畑所長さんの間で、何かうまく行かないことがあって
様子がおかしなことになっていたのでした。
ある時有馬さんは、私達若い者にも聞いてくれと言わんばかりに、所長さんに話し始め
たのでした。仕事が一段落する夕方の事務所に全員が集まり、話し合いが始まったのでした。