2022/04/25無欠な家
名古屋城の本丸御殿はここ最近再建されたようです。
まだ日が浅いせいかヒノキの香りが漂っていました。
総ヒノキ造りで、隙のまったく無い完全無欠な建築です。木造の建築はやすらぎと温かさを
特徴とするのですが、こと大名屋敷においては、そのようなことはまったく意図しては
いませんね。
むしろ緊張感が漂い、張りつめるような雰囲気の中で回ったのでした。日本人はわび、
さびという気持ちの表し方をよくしますが、対極にあるような建築様式でした。
私達は日常杉の家をつくっていますが、空気感の違うことに驚くのでした。ヒノキと杉、
立木の姿は似ていますが、特徴は大きく異なります。やはりヒノキには独特の神々しさ
を感じるのでした。
柱、梁、長押、鴨居は節一つ無い材を使用して、木材の調達にはかなり苦労したのでは
と思います。ただこの地方は東濃ヒノキが産出される日本有数の林業地帯ですから、
そうでもなかったのかもしれませんね。
思い出すのは鶴丸城の御楼門の再建の際にも、岐阜県より頂いたヒノキ材があってこそ
出来た事業でした。
本丸御殿は当時の史料をもとに建てられたのでしょうから、当時の徳川の権勢を
これでもかとばかりに感じるのでした。襖絵や屏風は金色に輝き、格天井の組子と絢爛な
絵柄、彫の深い欄間、長押の化粧金具どれを取っても豪華な設えに圧倒されるばかりです。
一つだけ緊張感の緩むものがあって、ほっとした気持ちになれたのはよかったです。
戸締りをするためのつっかい棒が建具にはめられていました。懐かしいものを見たのでした。
この様な建築も知識的にはいいことかもしれませんね。