2022/06/04勤務地18
この頃から現場社員の仕事も分業が進むようになっていました。
躯体施工図は設計図面を、現場施工できるレベルまで落とし込んだもので、これが
ないと型枠大工は割り付け図が書けません。
コンクリートの柱、梁はミリ単位で寸法を記入して作図がなされ、これが躯体工事を
する全ての元になるのでした。この施工図は多くの工事情報を集めて出来るもので、
現場マンとしてはそれは知っておく必要があります。
設計図書の構造図に示された柱や梁の寸法はもとより、サッシュ回り、内部開口、床
レベル、最上階の防水仕様、ベランダの段差、配管の位置、打ち込み金具、盗み寸法等
書き上げるのに、実に多くのことを検討しながら施工図を書く必要があります。
木造住宅で言うと木材のプレカット加工図に当たるといえますね。
一般的に建築では納まりと言いますが、綺麗にお互いの物や柱、梁が干渉することなく
仕上げなければなりません。
それを書き上げるのは、現場マンが相応しいのは当たり前のことでした。
その現場マン、日中は現場に出ていますので、書けるのはおのずと仕事が終わってから
になるのでした。よく先輩に指示されて、今夜中に仕上げておくようにと言われて書き
上げるものでした。そのようにするのが現場の慣例でしたが、現場マンの負担は相当な
ものがあり、次第に施工図を書く専属の人間が配置されるのでした。
その役目が大正の現場では谷さんだったのです。谷さんとは煙突工事を一緒にさせてもらう
ことにもなり、多くを傍で学ばしてもらったのでした。
ある時安部さんと私は、梅田で一杯やらないかと誘われて一緒することに。当時谷さんは
35歳位だったでしょうか。多くの経験談を聞かせてもらいながら、人となりも伺うことが
出来てよかったです。自分がお母さんと一緒に生活して面倒を見ていることから、家庭は当分
持つことが出来ないということでした。
それは一面では、独身生活を謳歌している姿にも見えたのでした。