2022/09/28人の話
建築屋は色々な人とお付き合いさせてもらうので、自分の知らない世界を間接的に
ではありますが知ることになります。その働いている業界なり職場環境を知ることは
大変興味があり、そこから世の中の一端や仕組みを知る思いがするのです。
ですので打ち合わせの合間やちょっと個人的な話になった時、それでどうされた
のですかと食い付いていくこともありました。
すると良くぞ聞いてくれましたと言う態度で自分のことを話す人も多いのです。
またお客様は何気に私達に質問をすることもありますが、自分の話を聞いて欲しい
と思ってしているのかもしれませんね。
人は聞くことよりも自分が話すことが基本好きですので、そのようなタイミングは
こちらが感じ取ってあげたいところです。
お客様とは家のことについては話ししなければ始まらないことですから、どんどん
聞いていきます。要望や住まい方のパターン、趣味趣向と色んなことを聞いていきます。
そこから話が脱線することもウェルカムで、その人の考え方のベースになっている事や
大切にしたいと思っている事、倫理観や基本的な生き方の哲学を聞くこともあるのです。
そのようにしてお互いの胸襟が開かれた中で話を重ねると、人間関係は急速に近くなる
ことを実感するのです。
そして打ち合わせは違った次元に進んでいき、仕事の話も個人的な話しも含めて打ち
合わせは楽しいひと時に変わるのです。ここまでくるともう家造りは成功したような
ものになりますね。
一つだけ例を上げたいと思います。ある方は家造りの前に私の書いた小さな冊子を
読んだ事から縁が始まりました。光栄なことに何か波長の合うものを感じ取って
くれたのです。すると自分の生い立ちや、上級の学校に進学を勧められるも、
家庭の事情で諦めざるを得なかったことを話すのでした。
その話は幾度となく聞かされて、本人の悔しい気持ちが痛いほど伝わってくるのです。
もし学校に行けたら、もっと違った人生を歩いていたかもしれないと考えるのです。
しかし話す言葉は、自分の歩いてきたことを肯定し、これで良かったと微塵も引きずる
様子はないのです。
ある意味逆境ではありましたが、それがまたこの方を修練させたとも言えます。
「与えられたところで花を咲かす」好きな言葉の一つです。