2021/01/08木材の試験
メリメリ、バキッと大きな音を立てて木材は壊れてしまったのです。
掛けた荷重は約6トン。油圧の力で曲げや圧縮強度を測る試験機に
載せられた木です。
家造りの構造材として日常的に使われる柱や梁は、どれくらいの強度が
あるのだろうか。建築に携わる者として素朴な関心と興味から、
鹿児島県工業試験場に依頼したものです。
試験機に乗せられた梁は幅4寸、成6寸です(120×180)。
すみませんいまだに建築業界では尺貫法が残っていて、こちらが
ぴったりとくるものですから。
人工乾燥材と自然材とを持ち込んで、両者を比較することも
目的としてありました。
日頃から人工乾燥木材は生命をなくした木で、細胞は破壊され
もはや木としての性質を見出すことの出来ないものであると言ってきました。
同じ産地で(宮崎産)同じような年輪と色味を持つ材料を選ばないと
比較になりませんので、選定には気を付けたつもりです。
やはり何といっても一目してその違いが判るのは、木の表面が異なることです。
人工乾燥木材は130度くらいの最高温度の窯の中で焼かれ、
強制的に水分や樹脂分を抜き取ることで製品として市場に出てきます。
ですから艶や粘り強さ、しっとり感や温かみ等の木の持つ特徴を失い肌の色が
くすんでしまっているのです。
人間に例えるなら血色の悪い不健康な体をした木といえます。
計測された強度の値を見てみますと、自然材より7パーセントほど落ちています。
最も際立ったのは、木のしなやかさが著しく違うことでした。
たわみ初めてから6.5センチくらいでもろくも破壊した人工乾燥材、粘り強く
13センチくらいまで持ちこたえ、しなりながらも容易に破壊しない自然材。
予想した通りとはいえ、実際に今回実験してみて感じたのは、生きた木の持つ
柔軟性ということでした。数値以上に柔軟に対応する力を持っていることでした。
日本建築の民家や社寺仏閣がなぜ金物も使わずに、長いこと現存し続けるのか、
その証を見たようでした。