2021/09/26差し金一本
木造住宅を手刻みでやっている工務店は今殆んどありません。
その昔木造住宅は、差し金だけで墨付けをし、手で刻んで加工していました。
基本となる板図にはX、Y方向のそれぞれにイロハ・・・、一二三と番付けされ
ます。板図は間取りの基本情報で、これには家一軒の情報が詰まっています。
これに実際の柱や梁に寸法を刻むために、基準となる尺棒とか間さおと呼ば
れる長尺の棒があれば、大工さんは仕事を始めることが出来ます。
100本を超える柱とさらに大きな量の梁を、一本ずつ手に取り加工する
のです。棟梁と尊敬の念をもって呼ばれる人は、家造りの総頭になる人です。
ですからかなり優秀な人物でないと務まりませんでした。また差し金術(規矩
術ともいう)は聖徳太子の時代に伝わり、日本建築にはなくてはならない技術
に発展してきました。私達は3平方の定理や√の数値、円周率の事は、数学で一通り
習ったので知っていますね。差し金には表面、裏面があり、尺貫法で数値が刻まれて
います。たったこの薄い平たい差し金で、上記の数学の定理の全てを示すことが
出来ます。棟梁は表、裏面を繰り返し使い分け墨付けをしていくのです。
職人の太い手と指は絶え間なく動き墨差しにより、墨付けがなされます。
四方八方から交差する木材を、一分の隙間の無い加工に仕上げてしまうのです。
もう消えてなくなりそうな技術ですが、絶対に途絶えさせてはなりませんね。