2021/10/05記念日に寄せて2
独立する時、根拠はありませんでしたが、何とかやれるという気持ちはありましたね。
「根拠のない自信」とでもいうのでしょうか。家族に相談すると「やってみたらいいんじゃ
ないの」との一言で、実にあっさりしたもんです。仕事は初めから用意してスタートを切って
いませんので、当然のように何もありません。その代わり何でもやってやろうという気持ちで
一杯でしたね。今まで技術者として大概の事はやってきた。あらゆる分野の建築も経験してき
た。強がりでもそんな気持ちになれたのはよかったです。また今まで受け身で仕事はせざるを
得なかったものが、「自分でこんな建築を造りたい」という思いが叶えられると
思っていました。これからは自分の才覚だけが頼りだと自覚すれば、それなりに動きは
違ってくるのでした。とにかく人に知ってもらわなければ話になりませんので、よく出掛けて
行っては自己PRをしましたね。設計事務所、中高の同窓生、鹿児島市在住の同胞、親戚関係
者、子供の学校関係、地域での活動にと動き回ったのです。一方で3か月分の生活費位しか
貯金はなかったので、あまり悠長には出来ないとも思っていました。そろそろ何とかしないと
拙くなると思っていた頃でした。
社員時代に川辺の薬局店を造らせてもらったことがあります。枕崎からの帰りでしたが、
ちょっと寄って挨拶でもしようと思ったのです。店主は薬卸業者の担当の方と店のことで話
をしている様子でした。挨拶をすると「おぉ、あなたは来たね」と言って迎えてくれたので
した。「今ねぇ店の増築を考えているところで、その話を担当者としているところだった」
と言われます。話を聞くと割と大きな計画でのようです。その話が終わる頃でした。
「私も自分で始めましたので、まだ業者が決まっていないようであれば、見積りだけでも
させてもらえませんか」と訊いたのです。すると少し間が開いて、「あなたが出来るのな
ら・・・、あなたでいいよ」と言ってもらえたのでした。いやあ、この時は嬉しかったで
すね。忘れもしません。金銭的にも段々と詰まってきていましたので感謝、感謝でした。
前回よりも大きな金額の工事になり、設計から施工まで一貫して任せてもらったのでした。