2021/11/21何が頼りか
奈良や京都に建つ木造古建築は、悠久の時を経てなお健在な姿を私達の前に見せてくれて
います。その事自体に驚くのですが、どうして千数百年も屹立していられるのかを考える
と、理にかなった大工術があったからということに思いが至ります。
中国から渡ってきたと言われる木造の大工術は、日本独自の進歩を遂げて高度で緻密な技
として、今もなお通用しているのです。戦後の木造軸組み工法を学んだ私たちが最も驚愕
し、深い尊敬の念を覚えるのは、「釘一本打たない」ことです。
古い木造の家を移築するのに、「家を解く」という作業が先行しますが、昔の家であるか
らこそ出来ることで、現代の木造建築では不可能なことです。
今の家はボルトで引っ張り、あるいは金具を使い緊結しているからです。
柱と梁、梁と梁の骨組みはもとより、これに下り棟や斜材、丸柱や湾曲材迄見事に組合
っています。その見事な骨組みにはただ感心するばかりで、釘に頼らずに
「構法で頑丈な家を造る技」に感嘆するのです。
話は飛びますが、2×4工法の家は北米を中心に発達して、日本でも沢山ではありませ
んが建築されています。この工法の神髄は釘にあります。
何万本という釘を打ち込む事で、構造の拠り所としているのです。大小さまざまな釘を、
大工さんは何日も要して打ち込んでいきます。そして間違いのないように釘には色付け
がしてあります。今ではエアコンプレッサーがありますので、機械に仕事をさせれば
いいのですが、手打ちの時代は大変苦労されたのではと想像します。
同じ住む家でも色々な工法がありますが、地域の気候風土に合ったやり方が一番と考え
ています。