2022/12/20民主的に
建築の業界人は仕事をする上で思いがけないことに遭遇することがあります。
この業界はクレーム産業とか、3K職場とか色々言われてきましたが、近年は
著しく改善されて隔世の感を持つのです。
高度な技術で最先端のインテリジェンスビルを造る花形の一面があるかと思うと、
最前線の職人技まで幅広く重層的に人が関わる産業です。
おまけに現地において一品作として造り上げるもので、特有な課題に直面する
ことはまま起きるのでした。
その中で難題が降って湧いたようにしてやってくるのが、水利組合の存在です。
田んぼへの水利を目的にして作られたもので、はるか昔から農家人達が
自らの力で川より引き込んだ用水路になります。
私達建築人はこの件で、よく悩まされることがあるのです。
地方に多いのですが、加世田は中心部に大きな用水路が通っており、避けては
通れない案件になります。
さて場所は高鍋町(宮崎県)の中心部に作る遊技場(パチンコ店)でのことです。
高鍋はこの地域の中心部で、行政の機関も集まる賑やかな所です。そこに当時の
経営者が着目して遊技場を造ろうと決断したのです。
2階建ての比較的大きなビルとして、パチンコ店の工事は始まったのでした。
駐車場の整備も終盤にきて、後はオープンの日取りが決まれば、建築技術者の
任務は無事終了となります。
ところが浄化槽からの排水を、農業用水路には流させないという事態が降って
湧いたように起きたのです。オープン間近のことで驚き、造る私達、設計者、
仲介業者、事業関係者、全員がこの先の行方を案じたのでした。
水利組合の人達との協議は度々重ねるもまとまらず、水路への放水はとうとう
諦めざるを得ないのでした。
それでどうしたのか。詰まるところ、行きつく先は農業用水路でない水路への
排水しか道はありません。何百メーターもある水路へ露出で配管を敷設して、
やっと開業へこぎつけたのでした。半年以上遅れた上に新たな資金が必要になり、
開業から難しい船出になったのではないかと思います。
ここまで問題を根深くしたのは、水利組合の同意をしっかりと貰っていなかった
という事があります。水利組合は恣意的な所が無きにしも非ずで、その運用と対応
は当たってみなければ判らないという事が往々にしてあります。
私達もこの地域の建築は、特に気を付けているところです。もっとも建築が出来る
出来ないは、それ以前に解決しておくべきことです。