2021/10/29一気呵成4
型枠大工は1棟の躯体工事が終了しても、次の教室棟や体育館が待っています。
先の長い型枠工事ですが、一棟ずつ確実に前へ進める必要があります。
コンクリート打設前の2~3日は、決まって夜間作業が行われ10時頃までハンマーを
振るうのでした。鹿児島より30分くらい早く日没しますので、4時半頃から投光器を
足場に設置して、手元を明るく照らすのが私達の日課となったのです。フロアー全体の
明るさは水銀灯で照らし、各パーツはそれぞれの投光器が役目を果たすことになります。
職人は8時から17時の作業を終えると、しばらく休憩して夕食を取ります。
それからまた気合を取り戻して、3~4時間の作業をするのでした。きつかっただろうと
思いますね、私達でさえもそうでしたから。体を張って働いた職人が更に延長戦を戦うので
す。まともな神経ではいられないのか、酒を引っかけて作業を始める職人も出始めます。
足場の上でよろめきながら、時に奇声を上げながら作業するので
ひやひやものです。職長には注意するように声を掛けますが、その職長もおかしな雰囲気が
ありますから、駄目でしたね。季節は生駒や葛城山からの吹き下ろしの風も吹き始めようと
していたのです。社員としての安全管理意識は麻痺してしまい、ただ事故が起きないことを
都合よく願っていた気がします。情けないことですが、「工事が進まない事にはどうしようも
ない」と優先事項を間違えていたのですが、その事さえ気付かない状態にありましたね。
もしあの時、あの状況でと今考えると身震いがするほど怖くなります。ただ運が良かった、
それだけのことです。